2006.12.01 執筆コラム 日本初!?「離婚見舞金」が就業規則に登場

公益社団法人 日本マーケティング協会発行 『MARKETING HORIZON』2006年12号掲載

44秒に1組が結婚し、約2分に1組が離婚している現在。3組に1組弱が婚姻関係を解消している計算だ。さらに、もうひとつの2007年問題といわれている熟年離婚予備軍や、事実婚として届けを出していない夫婦の関係解消も含めれば、離婚はもはやわたくしたちにとって特別なことではない。

離婚に際してもっとも大きな問題である「子供」と「経済」のハードルも、依然として乗り越えるべき壁としてはもっとも困難なものではあるが、少子化と女性就業率の上昇を背景に、明らかに離婚を取り巻く環境は変化してきている。

また、夫婦それぞれの親の意識変化も大きく、「石にかじりついても我慢しなさい」から、「いやなことがあったら、いつでも戻ってきていいのよ」という「ものわかりの良さ」が普通になりつつある。

しかし、その一方で離婚に際してのさまざまな制度は人びとの意識や実態に追いついているとは言えず、ネガティブで後ろ向きのものとされているのではないか。事実、離婚を円満に解決するサポートを行う家庭裁判所の調停員でさえ、地方では古くさい夫婦観や男女観が呆れるほど根強くはびこっているという(さすがに都市部の家裁では調停員も時代変化を心得ている)。

確かに離婚は、結婚式のように多くの人たちから祝福されるものではないかもしれない。が、結婚と同様に「より良い人生の選択」として大きな生活の変化をもたらす離婚であるにも関わらず、あまりにもないがしろにされているのではないだろうか。今後は結婚→離婚→再婚という人生双六も決して珍しいものではなくなっていくというのに。

多くの会社では、就業規則として慶弔規程をさまざまな項目にわたり掲載していることと思う。その慶弔規程にこのたび「離婚見舞金」を盛り込んだ会社がある。むろん「結婚祝金」「出産祝金」「弔慰金」「傷病見舞金」「災害見舞金」等、ごく一般的なものも並んでいるが、それらと同等に「離婚見舞金」にも一条が割かれている。

「離婚見舞金」が盛り込まれた理由は至極明快だ。結婚と同様に、より幸せな人生を選択した人を応援しましょう、というものだ。さらに言えば、結婚の4倍のエネルギーを要すると言われている離婚である。会社としては労いの意味とともに、応援の意味も「離婚見舞金」に表現したいと考えた。

マクロトレンドから鑑みても、結婚や出産、弔意や傷病について何らかの慶弔を表現していながら、離婚だけを無視するというのは明らかに旧来価値観に偏重しているといえよう。

さらにいうと、この会社では休暇の種類として、正式に「不妊治療休暇」についても就業規則に明記されている。こちらは少子化対策の一環として官民あげてさまざまな視点から議論がなされているが、プライバシーの問題や、子供を持つという個人の選択に対する支援をどこまで国や企業が関与するかという点で、検討はされているがなかなか進展は見られない。しかし、進展があろうとなかろうと、現実には不妊に悩み、心理的・身体的・経済的苦痛を伴ってもなおその治療に日々挑んでいる夫婦は47万組とも50万組とも言われている(データに表れない数字はもっと多い)。カラダのリズムが最優先される治療であるが故に、就業時間中に通院しなくてはならない場合も非常に多い。「出産」というライフイベントも、もはやコウノトリを積極的に捕まえに行く時代なのだ。

国の動きは一般的に非常に遅い。マーケティングの悪いお手本の最たるものだ。人々のニーズやウォンツにいち早くカタチにして提供するのが、わたくしたちの仕事である。働き手が苦渋に満ちた顔をしていては、より豊かな生活提案などできるわけがないだろう。企業は自らの足下から、貪欲に、アグレッシブに「しあわせ」「ゆたかさ」を体現し、攻めていかなければならない。

と、いうわけで「離婚見舞金」も「不妊治療休暇」も、前例がないと周囲から言われつつも、絶対に譲れない項目として就業規定改訂時に盛り込んだのは、弊社ウエーブプラネットである。結婚も離婚も、不妊治療も出産も、個人のプライベートな問題であると同時に、明日の市場と密接に関わるライフイベントである。日頃から調査票の旧態依然としたフェイスシート項目に違和感を唱えている身としては、まずは自社から見直してみた次第である。