2010.09.01 執筆コラム 2010年 シニアガールズたちの熱い夏

公益社団法人 日本マーケティング協会発行 『MARKETING HORIZON』2010年9号掲載

連日のように記録的な暑さを更新し続けた今年の夏。暑さのせいというわけでもないが、大人ガールズ・シニアガールズたちの「熱さ」もまた話題になった夏だった。

ちなみに、ここでの「大人ガールズ・シニアガールズ」というのは、従来だったら「おばさん」「中年女性」とひとくくりにされていた40代後半以上の女性たち(大人ガールズ)や、更年期を迎えた50代(シニアガールズ)を指すが、いまやさまざまな市場が彼女たちに注目している。

バブルを経験した20代の時と変わらないマインドとファッション&ビューティに対する消費意欲。子育てがひと区切りついたり、親もまだ介護を要する年齢ではなかったり、同窓会で「かわいかったときの自分」にタイムスリップしてその気になったり、と外的環境も内的意識もガールズとして活性化する年代である。

もはや年増とは言わせない

さて、そんな彼女たちが勢揃いしたポスターをご覧になった方も多いだろう。いつも話題のポスターで注目を集める「としまえん」。今年はずばり「TSM48」である。パッと見は水着姿の正真正銘ガールズたちの大集合写真に見える。しかし、よくよく見つめると「TSM」な女性たち。いや、それでも相当目をこらさないと年齢を推測することはできないだろう。

そのくらい彼女たちはスタイル良く、かわいらしく、はしゃいだ笑顔を見せている。水着ゆえの驚きはあっても、おそらく流行りの洋服を普通に着こなしていれば街中にも電車の中にもどこにでもいる普通の40代、50代女性である。

そう、もはや彼女たちは特別な女性たちではない、ということをわたしたちは肝に銘じておかなければならない。ポスターの中の彼女たちのように、加齢による多少の身体的変化はあるものの、オシャレについての意識も行動も、一番輝いていたガールズの時代から衰えてはいない。むしろ経験が増えた分だけ、より活発になっているといってもいい。

無視できない熱い想いを抱えている

創刊1周年を迎えた『美STORY』でも大人ガールズ・シニアガールズたちの勢いが止まらない。本誌に相応しい話題か否か、記述するには躊躇を伴うのだがお許し頂きたい。男性向け一般週刊誌でも話題になった40代を中心とした「読者モデルヌード」の掲載や、48歳のカリスマ主婦モデルのヌード(同時期に芸能人との熱愛報道でも話題になった)。いままでだったら夫や子どもがいる妻や母としての行動としてはあり得ないものだったからこそ、注目を集めた。

年齢の割にはとってもきれい、という声も見てはいけないものを見てしまった感じ、という戸惑いの声も男女ともに聞かれた。しかし掲載が女性ビューティ誌であったことと、何よりも彼女たちの姿が男性に向けてではなく、女性、もっとはっきりいえば自分自身に向けた、ある覚悟を伴う潔さを漂わせていたことに強さを感じずにはいられなかった。

確かに必要以上の煽動的編集意図もあるだろう。しかし、実際に誌面に出た数名の裏側にいるその他大勢の「彼女たち」の熱い想いを、市場は無視することができないだろう。見て見ぬ振りをするには、もはやあまりに大きな存在なのである。

輝けるシーンがあるから行動が生まれる

大人ガールズ・シニアガールズたちの夜遊びシーンも無視できない。かつてガールズたちが通った青山のDISCO「キング&クイーン」。現在は六本木にて復活しているが、ここで大人ガールズ・シニアガールズたちが当時流行った曲に合わせて楽しそうに踊っている。CLUBでは味わうことのできない彼女たちにとっての安心感が、そこにはある。また、ガールズたちがいれば当然ボーイズたちもいるわけで、なんだかとっても楽しそうな「プチ同窓会」的雰囲気に満ちているのだ。

「~くん」「~ちゃん」と呼び合いながらの夜遊びシーンはDISCOだけに限らない。昔なじみの男友達や新たな出会いによる飲食(+α)の機会が30代の時よりもずっと増加するからこそ、アンチエイジングにもオシャレにも気合いが入るというものである。特に妊娠の心配が既になくなっているシニアガールズは、少々弾け気味でもあるようだ。

これまでの中年女性目線で見ていては、決して読み解けない大人ガールズ・シニアガールズ。おりしも快進撃を続ける宝島社からは10月に40代女性向けの新雑誌『GLOW』も創刊される。たとえ年齢を重ねても、箸が転んでもおかしい年頃として衣食住遊を描いていくと、新しい市場の手掛かりを見つけることができるだろう。