2010.02.01 執筆コラム 「嫌消費」世代の研究(松田久一 東洋経済新報社)

公益社団法人 日本マーケティング協会発行 『MARKETING HORIZON』2010年2号掲載

「クルマ買うなんてバカじゃないの?」の本、と説明した方が通りがいいだろう。帯買いした人も多いに違いない。そのくらいこのコピーは、タイトルにしなかったのが不思議なくらいインパクトが強く、すべてを言い尽くしている。(ちなみに、このコピーの文脈は公共交通充実エリアに限定された話ではあるが、クルマを買う→初期費用だけでなく維持費がかかるし、環境にも負荷を与える→経済観念も社会性もないダメな奴、というものである)。

嫌消費世代から「バカじゃないの?」と言われる対象はクルマだけではない。高額ブランド品も家電もアルコールも、彼らにとっては「買う意味」がない(買う必要がない、のではない)ものである。従来の「持ってて当たり前」「欲しくて当たり前」の構造が変容しているのだ。その変容状況を、著者はこれまでの20年以上の世代研究成果と新たな調査結果をもとに、著者自身の洞察力で丹念に読み解いている。

この本の大きな魅力は「嫌消費」世代についてのわかりやすい解説書という以上に、世代と社会現象(この場合は消費現象)の考察アプローチを非常に丁寧に披露している点である。マーケッター必読書であるが、売れない売れないと焦っているB to Cの企業経営者にも薦めたい。どうして従来型の売り方が通用しなくなっているか、売れないという現象に惑わされるのではなく、人々が買わなくなっている仕組みを理解して欲しい。幸い「未来の消費社会」についても、経済システムを踏まえた示唆を著者は記している。